【コラム】コミュニケーション(後編)
実はコミュニケーションも同じです。
人前で話をしたり、皆で会話したりするのが苦手な人は「人前で堂々と話している人」「みんなを面白トークで盛り上げている人」に憧れて目標にします。
その目標自体はとても素敵なものなのですが、多くの人が一生懸命その人のマネをしようとしてしまいます。
そして上手くいかず「やっぱり私には無理なんだ」と挫折して落ち込み、ますます苦手意識を持ってしまうのです。
それはジョギングが大嫌いな私が、いきなりオリンピックの長距離選手のマネをしようとするようなものです。
上手くいくわけがないのです。
そこで私がお勧めするのは、まずは「頭の中に浮かんだ情景を言語化する」ことに慣れましょうという方法です。
私は「実況中継」というトレーニング方法をお勧めしています。
なにもスポーツキャスターのように野球の実況中継をリアルタイムでこなせ、というわけではありません。
ただ見えたものを言葉にして声に出して言うだけでいいのです。最初から文章がきつければ単語だけでも構いません。
「スマホ」「パソコン」「いす」「壁」「窓」……。そんな感じで次々に口に出していきます。
それがクリア出来たら「窓が見えます。窓は白い枠です」と文章にしていきます。
これ、何をしているかと言うと、「見た風景(=頭の中に浮かんだ情景)を言葉にする」という訓練なのです。
脳の中で視覚を担当する領域と言語を担当する領域は違う場所です。
その違う場所はシナプスという神経細胞で結ばれているそうです。言ってみれば街と街をつなぐ道みたいなものですよね。その道が細い獣道なら荷物(情報)は少ししか運べないし、運ぶのにも時間がかかってしまいます。
では、スムーズに言語化するのはどうすればいいか? 理屈は簡単です。道を太くすればいいんです。
どうすれば道は太くなるか。これまたシンプル。何度も何度も道を通れば、踏み固められて徐々に太くなっていきます。
なにもシナプスなんて難しいことを持ち出さなくっても、野球の素振りを思い出してください。
何度も何度も素振りをしているうちに「身体が覚えて」動きがブレずにスムーズになっていきますよね。
考えなくても身体が動くようになってきます。これを言葉でやるのが「実況中継トレーニング」です。
言ってみれば、言語化の素振りですね。
「ジョギングの最初の一歩はジャージに着替えるところから」と同じような気持ちで、見えたものを声に出していってみるところから、今年はコミュニケーションを鍛えてみませんか?
講師 桑山 元