メールは不器用なツール~「送信ボタン」の前に最終確認を - “Eメール”コミュニケーション術②
細かいニュアンスを伝えるのは苦手
対面(口頭)とメール。コミュニケーションの手段としては、それぞれに得意なこと、不得意なことがあります。
メールには「好きな時間に読める」「やり取りが記録に残る」「情報共有が容易」などのメリットがある一方で、基本的に文字だけを使って意思疎通を図るため、誤解が生じやすいという側面もあります。
たとえば「結構です」という表現。こんな流れで出てきたとき、あなたならどう解釈するでしょうか?
Aさん「このたびのお話、進めてもよろしいでしょうか?」
Bさん「結構です」
イエスなのかノーなのか、これだけでは判断ができませんね。もしも、「結構です」をAさん、Bさんがそれぞれ都合良く解釈してしまうとすると、大変なことになりそうです。
これが口頭でのコミュニケーションならば、「はい、結構です。進めてください」というニュアンスなのか、あるいは「いいえ、結構です。また次の機会に」なのか、声の調子、さらに相手の表情や態度によって容易に判断ができるでしょう。
「そのように思います」「そのように進めてください」などの「その」が、文中で何を指すのか。こうした表現(指示語)でもすれ違いが起きることがよくあります。
メール送信前には、こうした「あいまいな」言葉を使っていないかどうか、丁寧な確認が必要です。
メールは言葉の印象が強くなる
もともと日本語そのものが「曖昧さ」を持っていることもあって、メールが誤解を生みやすいコミュニケーションの方法だということは、お分かりいただけたと思います。
もうひとつ注意したいのは、「メールの場合、言葉が強く伝わる」傾向があること。すなわち、送ったあなたが意図したよりも、受け取った相手が過剰に反応してしまうことが起きやすいのです。
たとえばメールが往復する中で、こんなやり取りがあったとしましょう。
Aさん「一度お目にかかりませんか」
Bさん「私は構いません」
これを読んだAさんは怒り出すかもしれませんね。あまりに「ぶっきらぼう」「無愛想」なモノの言い方に思えます。
いっぽうBさんは「オーケー。いいですよ~!」という気持ちを伝えたかったのかもしれません。対面の会話であれば、声の調子や表情でニュアンスが伝わるのですが、メールでは、「構いません」という言葉だけが“一人歩き”してしまうのです。
「送信ボタン」の前に最終確認を
コミュニケーションにまつわるトラブルが起きるとき、口頭よりもメールのほうが深刻な事態になることが多いのも、メールの持つこうした特性によるものと考えられます。
部下が起こした「メールのやり取り」のトラブルを、上司が電話で謝り、さらに2人揃って直接会いに行って謝罪する――。とても皮肉な現象ですが、あなたの周りで起きないとも限りません。
上司と謝罪に行くほどのトラブルを招かないためには、書き終えたメールを丁寧に確認することが大切です。とはいえ仕事の時間内に送るメールですから、念入りな推敲はできないかもしれませんね。そういう場合に便利なのが、チェックリストを作っておくこと。
たとえば、次の3つを確実にチェックするだけでも、事故発生の確率を下げることが可能です。
1.固有名詞の誤りはないか?(人名、会社名、地名、商品名など)
2.数字の誤りはないか?(日付、数量、金額、品番など)
3.あいまいな表現や無愛想な表現はないか?
一度にすべてをチェックせず、「1」~「3」をひとつずつ順番に確認していくのがコツ。つまり、最低でも3回は読み返します。加えて「3」については、相手の立場、相手の目線で読んでみること。「あの人なら、どのあたりに疑問を感じるだろう」と、想像力を働かせるのです。