仕事の基本~「報連相」は組織の血液 “気働き”コミュニケーション術⑲
仕事のミスの多くは報連相でカバーできる
「また、報連相ですか……」。がっかりしたような、あなたの声が聞こえてくるようです。社会人、ビジネスパーソンであれば、それこそ入社以来“耳にタコができる”くらい、聞かされてきたことでしょう。
ここでは「しなければならない」という義務感ではなく、「するとこんなにお得!」という情報として取り上げてみたいと思います。
「報連相」について、最も重要なポイントを挙げるとすれば、それは言うまでもなくスピードです。特にトラブルやミスの報告は、すべて一刻を争うと言っても決して過言ではありません。「報告があと5分早ければ、解決方法が“倍以上”あった」というような事態は、あなたの周りでも日常的に起きているのです。
先輩や上司が報連相の徹底を厳しく言い続けるのは、「トラブルを解決する“選択肢”をできるだけ多く確保する」ため。解決への選択肢に幅があれば、お客様はもちろん、組織や部署、個人へのダメージを最小限にする“工夫の余地”が残ります。
ところが、「上司に叱られたくない」とか「発覚する前に自分の力で解決しよう」などと考えていたために解決への選択肢がどんどん狭まり、「大きな犠牲」を伴う方法を取らざるを得ないことになる――。これは、何としても避けるべき事態なのです。
「報告」や「連絡」は、いわば組織の血液です。滞ってしまえば指示命令系統が働かず、正しい判断ができなくなり、各所が機能不全に陥ります。
トラブル報告のメールを書く時間があれば、まず電話をする。先輩、上司が社内にいるなら、とにかく席を立って“1分1秒でも早く”口頭で報告する。これらの行動が、結果的にお客様、組織や部署、そしてあなたを救うことになるのです。
先輩も上司も、実は「相談」を待っている!
皆さんの先輩や上司の方から見ると、報連相の3つめ「相談」はなかなか“いい響き”の言葉だと感じているはずです。
「お願いがあるのですが」とか「実は、悩みがあって」などと声を掛けられれば、「えっ! 何事だ」と警戒するでしょう。しかし、相手の余裕を見計らいつつ「ご相談があるのですが」と切り出す分には、きっと「ん? どうした」という返事が戻ってくることでしょう。先輩、上司としても「あ、俺って頼られているかな?」という喜びを感じ、「いいよ」と答えたくなるものです。
相談する側のあなたが想像するよりも、される側は「何かあったら、相談に来てほしい」と考えている――と思って間違いありません。「誰も相談しない上司、イコール人徳の欠如」と見られることを“密かに”恐れているからです。
注意が必要なのは、「誰に相談すべきか」という点です。日本の企業、組織は基本的には「頭越し」を嫌う傾向があることはご存じのとおりです。「仕事の相談は、直属の上司にすべき」が、いわば不文律ですね。
そのため、たまたま社外のパーティーの席で他部署の先輩、上司などと一緒になり、アルコールの勢いも手伝って意気投合。「実は部長、こんな席で申し訳ないのですが」などと“込み入った”相談事をぶつけてしまう――。このような行動は控えるべきです。不用意に相手(直属の上司)を傷つけたり、人間関係を悪くしたりする原因ともなります。
「報告」「連絡」が組織の血液だとすれば、「相談」は医師の診察のようなものです。問題の兆候を感じたら、早めに相談~解決を目指すようにしましょう。仕事のできる人の多くは相談上手。特に「助けて!」の信号を早く出せる人が、問題を抱え込んでしまうタイプに比べ、スムーズに仕事を動かせるのです。
また、あなたが先輩、上司の立場であれば、若手の相談にはぜひ積極的に乗ってあげましょう。若いころに「相談して助かった」という経験を積んでいけば、いざ後輩の面倒をみる立場に立ったときに、進んで相談に乗ってあげられるようになるものです。