相手から「Yes」を引き出す方法 “気働き”コミュニケーション術⑱
上司の不在を電話で正しく伝えるには?
前項でお話しした「マジックフレーズ」は、とても応用範囲の広いコミュニケーションのテクニック。日々の仕事の場面でも、すぐに活かすことができます。
たとえば、あなたがこんな電話を受けたとしましょう。
「石井課長いる?」
次のように応対ができれば、理想的です。
「申し訳ございませんが、課長の石井は席を外しております。午後3時には戻る予定でございますが、折り返しお電話させていただいてもよろしいでしょうか?」
ポイントは、次の3点です。
・クッション言葉
「申し訳ございませんが」のひと言が、相手に伝わる印象を“和らげる”効果を発揮しています。
・否定を肯定に
「席におりません」「いません」という否定ではなく、「席を外しております」という肯定の表現に。相手の方に好意的に受け取ってもらえる確率が高くなります。
・提案
「折り返しお電話させていただいてもよろしいでしょうか?」と、相手方の意向を伺います。
ここで注意したいのは、最後の「提案」です。「折り返しお電話させていただいてもよろしいでしょうか?」と、あくまでも「決めるのは相手」「決定は相手に委ねる」を実践しているわけです。これは★★ページでご紹介した「聞き手の決定権」にもつながる考え方ですね。「折り返しお電話させていただきます」では、相手の決定権を奪うことになってしまうのです。
こうした応対が的確にできれば、電話をかけてこられた方にも「分かってくれているな」「よく訓練された、いい会社だな」という印象を残すことができます。この一連の流れ「マジックフレーズ」を把握し、実践できるか否かによって、大きな差がつくと考えて間違いありません。
いただけませんか vs いただけますか
ここでマジックフレーズの“応用編”をご紹介しましょう。
相手から「Yes」の答えを引き出したい――。ビジネスの現場で、そんな状況を経験された方もいらっしゃるでしょう。こうした場面でぜひ試してほしいのが、マジックフレーズにも登場した「肯定語」を使った問いかけ方です。
たとえば「できません」という否定語を「できかねます」という肯定語に置き換えるだけで、相手に与える印象が大きく変わることは、お話ししてきたとおりです。
「できません」 =すべて否定されたように感じる。
「できかねます」=いつかはやってもらえるかもしれない、というニュアンスが伝わる。
「分かりかねます」「いたしかねます」なども同様ですね。こうした肯定語を使った言い方を、相手への問いかけに応用していくわけです。次の2つを読み比べてみてください。相手に何らかの決意を促すような場面ですね。
1.「お考えいただけ“ません”でしょうか?」
2.「お考えいただけ“ます”でしょうか?」
否定語がすべてNGというわけではありません。実際にはTPOで判断するわけですが、相手に「好意的に受け止めてもらう」ためには、否定的な表現=「1」(ません)ではなく、肯定的な表現=「2」(ます)を使っていく方法が効果的です。
「お考えいただけ“ません”でしょうか?」に対して、相手は「それはでき“ません”」と答えたくなりますし、「お考えいただけ“ます”でしょうか?」と投げかけられれば、「やってみ“ます”」と答えやすくなるのです。
そして、実はこれも「鏡の法則」のひとつ。こちらが肯定で投げかけると、相手からも肯定を引き出しやすいのです。
また、表情や態度の力も大きく作用します。
1.「ご了解いただけ“ません”でしょうか」(+恐る恐る)
2.「ご了解いただけ“ます”でしょうか」(+笑顔で)
両者を比較すれば、明らかに「2」に軍配が上がります。「Yes」を引き出す力がより強いことがお分かりでしょう。