“気働き”コミュニケーション術・電話編 相手に言葉、気持ちを伝える「極意」 - “気働き”コミュニケーション術・電話編⑧
類音語、同音語には要注意!
「声」に加え「表情・しぐさ」などを駆使して相手に言葉や気持ちを伝えられるのが対面のコミュニケーション。「声」だけを頼りにするのが電話です。そのため対面の場合以上に、相手への細やかな気配り、気働きが必要になります。
類音語、同音語への配慮もそのひとつです。
かつて石炭採掘など鉱業生産が盛んだった日本で、炭鉱の事故が起きました。そのときに「退避せよ」を「待機せよ」と聞き違え、多くの命が奪われることになった――という逸話が残されています。
「退避」(逃げろ)と「待機」(留まれ)は、まったく正反対の意味を持つ言葉。ところが、聞き違えてしまうほど「似た音」を持っています。このような言葉を「類音語」と呼びます。「類音語」は「同音語」と同様、特に電話では聞き取りにくいものです。
・類音語=病院、美容院/1月、4月、7月/東亜~、東和~/etc.
・同音語=製菓、生花、製靴、青果/~工業、~鉱業、~興業/etc.
企業のコールセンターなどでは、たとえば「1月(いちがつ)、4月(しがつ)、7月(しちがつ)」という類音語が誤って伝わらないように、「4月(よんがつ)、7月(なながつ)」と言い換えるなどの工夫をしています。
「類音語」「同音語」は、誤解されやすいことを意識してハッキリ伝えるように心がけ、必要に応じて復唱で確認しましょう。
話しながら「相手の表情」を思い浮かべる
電話で話しているときに大切なことは、自分の表情を意識することです。豊かな表情から豊かな声「エゴエ(笑声)」が生まれることは、お話ししてきたとおりですね。
同じように大切なのは、相手の表情を思い浮かべること――。相手の「声の表情」の変化を細やかに察知しながら、そのときの相手の顔を思い浮かべるのです。
企業のコールセンターで働くスタッフの研修などでは、よく次のように指導します。
「モニター画面の文字や数字を見ていてはダメ。そこに相手の顔を思い浮かべて!」
それぞれが相手の「顔」をパソコンのモニター画面に思い浮かべながら話すようにします。こうすることによって初めて、相手の立場に立てる。すなわち顧客心理をつかむことができるのです。
あなたもぜひ試してみてください。
自分の表情を意識すると同時に、相手の表情をイメージする。そして、気持ちに寄り添うように語りかける。相手の状況や心理に、あなたの“気持ちのピント”を合わせていくのです!
「お電話ありがとうございます」は必要か?
口角を軽く上げ、落ち着いて受話器を取り、そして第一声。
「お電話ありがとうございます。○○会社、○○でございます」
と、明るく、元気に、爽やかに――。は、お伝えしてきたとおりです。「お電話ありがとうございます」のひと言は、忙しい中、わざわざ電話をかけてくださった相手に対する感謝の気持ち。私も企業や地方自治体の研修などでは「必要不可欠」と、お伝えしています。
いっぽう、こうお話しすることもあります。
「いやいや言うなら、言わなくていいです!」
意外に思われるかもしれませんね。しかし、いやいや言ったところで“言葉に魂がこもらない”のです。「言いたくないな」と思えば、言わない方がいいと私は思います。
「はい。○○会社、○○でございます」(企業・団体・行政機関の場合)
「はい。○○でございます」(個人宅の場合)
心を込めてこう言えるのであれば、いやいや言うより、よっぽどいい! 「お電話ありがとうございます」に“こだわり過ぎる”必要はありません。