電話だからこそ「説明力」でこんなに差がつく - “気働き”コミュニケーション術・電話編⑦
電話での道案内で“迷子”になる理由
スマートフォンのマップ機能やナビ機能が発達した今日では、「お店などの場所を電話で聞く」ことが減ってきているようですね。週末の繁華街では、スマホやタブレット端末を見ながら目的のお店を探している姿が、ずいぶん目につくようになりました。
しかし、これは比較的最近のこと。少し前には、あなたもこんな経験をされたのでは?
「マズい、遅刻する!」
大事な人との待ち合わせに遅れそうなあなたが、駅から約束のお店へと向かっています。ところが初めて行くところで地図を見ても分からず、地下にあるためお相手のケータイも圏外。そこで仕方なく、お店に電話をしてみることにしました。
「あの~。そちらに伺いたいのですが……」
ガヤガヤと大音量が響く電話で、店員さんの説明を聞いたものの理解できず、余計に道に迷ってしまった――。これでは何のための道案内か、わかりませんね。
繰り返しお伝えしてきているとおり、音声だけによるコミュニケーション手段である電話は、その特性を十分に理解していないと、時として「誤解を生む」原因にもなります。「道案内を聞いて、かえって迷子になる」など、その典型と言えるのです。
実はこの「地図の説明」「場所の説明」は、電話応対の研修にも登場する“定番”課題のひとつ。それだけにコツをつかんでおけば、あなたの日々の仕事にも間違いなく活かせるはずです。
あなたが道案内をする“店員さん役”だとしましょう。最初に注意すべきは、相手の状況を正しくつかむこと。応対の上手な人は、
「いま、どちらにいらっしゃいますか?」
と、現在位置を確認するところから始めるのです。これを省いていきなり「○○駅の南口を出たら、最初の信号を右に」という説明の仕方はとても危険です。相手はまだ羽田空港に着いたばかりかもしれません。
次に必要なのは、交通手段~クルマなのか徒歩なのかなどの確認です。クルマの場合なら、一方通行や駐車場などの情報も必要になるでしょう。
いずれにしても、「説明のスタート地点」が相手とイコールでないと、かえって混乱するばかりなのはお分かりでしょう。冷静に「いま、どちらにいらっしゃいますか?」から会話を始められているかどうか。ここが大きな分かれ道なのです。
そして最後には、ぜひこうつけ加えましょう。
「お気をつけてお越しくださいませ。お分かりにならなかったら、いつでもお電話お待ちしております。浅川が承りました」
先ほどお話しした、「後ハート」ですね!
電話で話す相手の立場に立って考える
音声だけのコミュニケーションである電話では、対面のコミュニケーション以上に相手の立場に立って考え、気を配ることが重要です。ここでは、「相手がメモを取りやすいように」配慮する方法を考えていきましょう。
先ほどの道案内と同様に、まず相手の状態を確認します。電話で話す相手は必ずしもメモを取れる状態とは限らないからです。屋外では物理的に厳しい場合が多いはずですね。
特に伝える用件が長く複雑だと考えられるときには、
「いま、メモを取っていだだける状況でしょうか?」
と、必ず確認するようにしましょう。
相手がメモを取れる状況と確認できたら、いよいよ説明を始めます。この場合「単文」で話すのが、相手への気配りです。
「単文」とは、たとえば「締め切りは、30日です」とか「集合場所は、南口の改札です」「会議の議題は、各部の予算案です」「部長には、主賓のご挨拶をお願いします」など、いわゆる「主語→述語」のペアが「1つ」だけ含まれているもの。これならば短く簡潔で、聞く方もメモを取りやすいでしょう。
相手が「箇条書きでメモを取れるように」イメージしながら、短く伝えていくのがポイントです。
最初に全体のボリュームを伝える方法も、とても有効ですね。
「当日お持ちいただくものは、3点ございます。1点目は健康保険証。2点目は上履き。3点目は筆記用具です」
こうして説明すれば、聞き手もメモを取りやすいのです。加えて、要所要所で確認をします。先の例ですと最後に、
「~3点目は筆記用具です。ここまでよろしいですか?」
と、相手の反応を見るようにします。
もしも、相手がメモを取れない状況だった場合。伝える内容が長く複雑なときには無理をせず、しっかりと話しができる日時などを確認したうえで、改めて連絡する――という判断が妥当ですね。