とっさの「ひと言」があなたの評価を上げる “気働き”コミュニケーション術⑳

タクシーの中でのケータイ通話は乗客の権利?

 こんな場面を想像してみてください――。
 お客様から「商品について説明に来てほしい」と連絡があり、約束の10分前に到着できるように会社を出ました。ところが、あいにく電車が事故で止まってしまい、仕方なくタクシーに。このままでは約束の時間に遅れてしまいそうです。
 こんなとき、まず必要なことは「お客様への報告とお詫び」ですね。しかも緊急事態ですからメールではなく電話を選択。ここまでは“完璧”です! では、あなたが次に取る行動は、どちらでしょうか?

1.携帯電話を取り出し、すぐにお客様へ電話をかける。
2.携帯電話を取り出し、運転手さんに“ひと言”声をかけてからお客様へ電話する。

 おそらく、「1」を選んだ方が大多数だと思います。決して間違いではありません。しかし、社会人、ビジネスパーソンの気配りとしては、「2」のほうがよりスマートで洗練されていると思います。
 実は私自身もかつて、相当に慌てていたのでしょう、「1」のようにいきなり話し始めてしまったことがあります。携帯電話がまだあまり普及していなかったこともあってか、運転手さんが私の電話の声に「返事」をしてくださったのです。
「ごめんなさ~い。これは失礼しました!」
「どうぞどうぞ」
運転手さんは笑って答えてくださったのですが、これは相手に対して「失礼」にあたりますね。しかも、安全面でもマイナスでしょう。それからはどんなに急いでいる状況でも必ず、「電話一本いいですか?」と、前もって断るようにしています。

これは乗る人のマナーとして、ぜひ実行してみてください。もしも同乗者がいる場合、あなたのこうした振る舞いがプラスに評価されることは間違いありません。ほんの“ひと言”でその場(車内)が和み、しかも、あなたのコミュニケーション力、気配り力をさりげなくアピールできるのです。

“背伸び申告”はお互いにとってマイナスに

「電話一本、かけますね」
「はい、どうぞ~」
 ルームミラーに映る運転手さんの笑顔を確認したあなたは、さっそく相手先へ電話をかけることにしました。ここで、ときどき起きる“こんな問題”について確認していきましょう。それは相手に対してつい“背伸び”をしたような、無理な申告をしてしまうことです。
たとえば、こんな経験はありませんか?
上司から「資料、あと何分でできる?」と聞かれたときに、実際は「1時間はかかる」と思っても、つい「40~50分でできます」と無理な返事をしてしまう――。正直に答えると「そんなにかかるのか!」と叱責されてしまいそう、という気持ちが働くのです。
 この場合も、道路の混み具合などから考えて、約束の時間から「20分は遅れそう」と思っても、つい「遅刻はいけないこと!」という気持ちが強く働き、「10分くらい遅れそうです」などと“小さ目の数字”で申告してしまうことが起きるのです。

言うまでもなく、これはオススメできません。“背伸び申告”をしたとき、そのとおりに実行できるかどうか……。経験的には「できない」ことの方が多いように思います。
次の2つを比較して、どちらが相手にとってより迷惑、負担となるかを考えてみてください。

1.「30分くらい遅れます」と報告。幸いタクシーがスムーズに動いて20分遅れで到着。
2.「10分くらい遅れます」と申告し、交通渋滞に巻き込まれ20分遅れで到着。

同じ「20分遅れ」の到着でも、「2」のように“背伸び申告”をして遅刻のうえに遅刻を重ねることになれば、あなた自身ばかりか会社の信用にもダメージを与えてしまいます。こうした“背伸び申告ぐせ”は、意外にも多くの人が持っているようです。遅刻に遅刻を重ねるような危険性があり、場合によっては「もう一度電話をする」必要が生じます。これは明らかに“格好の悪い”ことですね。