鏡の法則――あなたが笑顔なら、相手も笑顔になる - “気働き”コミュニケーション術⑤
投げたボールは、投げた人に返ってくる
こんな経験はありませんか?
「犬は苦手。この犬、怖いな~」と思っていると、まるで心を見透かされているかのように、その犬に吠えられる。反対に「かわいいな~」と思っている人には、不思議なことに同じ犬がまったく吠えない――。
実は、私自身にもあります。
大切なお客様なのですが、「あの人だけは、どうしても苦手」という人がいます。打ち合わせはスタッフに行ってもらい、おかげさまで仕事はいただいているのですが、とにかく“相性が悪い”としか言いようがないのです。すると、不思議ですね。相手の方も私のことを、できれば避けたいと考えているというのです。
同じように、あなたの表情、声、内面にある感情などはそのまま相手に伝わっていき、まるで“鏡に反射されるように”返ってきます。このことを本書では「鏡の法則」と呼ぶことにします。思い当たることは、ありませんか?
この「鏡の法則」について“実験”をしてみたことがあります。
私どもアビットでは、地方自治体の電話応対の質を評価するため、調査の依頼を受けることがあります。実際にこちらから問い合わせの電話、ときにはクレームの電話をかけて、職員の応対ぶりを評価~報告するわけですね。
中部地方のある自治体からの依頼の際、こんなテストをしてみました。こちらからかける電話の雰囲気を次のように変えてみたのです。
1.明るく爽やかな感じで、言葉づかいも丁寧に「お忙しいところ、すみません。少々お尋ねしたいことがあるのですが……」
2.不機嫌そうな雰囲気で、あえて乱雑な言葉づかいで「えっと、ちょっと聞きたいんだけどさぁ……」
すると、こんな結果が出てきました。
「1」のように、こちらが「明るく爽やか」に尋ねると、それに引っ張られるように、役所の職員の応対ぶりも「明るく爽やか」になる。いっぽう「2」の場合は、「1」のときに比べ、明らかに電話応対の印象がマイナスに傾いてしまうのです。
まさしく「鏡の法則」どおりなのです!
役所に問い合わせる側の意識も大切
市民の立場からすると、役所の電話応対には「無愛想」とか「たらい回し」といったイメージが根強くあると思います。そのため、実際に電話で何かを問い合わせようとしたときにも、つい丁寧さを欠いた言い方になりがちではないでしょうか。たとえば、
「○○について知りたいんですけど……」
というような聞き方になってしまうことが多いと思います。ところが、これでは受ける側も「この人の問い合わせに、より良く応えよう」という気持ちになりづらく、事務的な応対になってしまいやすいのです。そこでたとえば、
「○○町に住んでおりますものですが、ひとつお尋ねします……」
という聞き方なら、どうでしょう。言葉を受け取った側も、「丁寧な問い合わせに、丁寧に応えよう」という気持ちに自然となることでしょう。
「こちらが明るい笑顔なら、相手も笑顔になる」「笑顔を絶やさない人の周りには、不思議と笑顔の人が集まってくる」――。こうした経験、あるいは印象は、多くの人がお持ちでしょう。
この「鏡の法則」は、対面でのコミュニケーションはもちろん、顔の見えない電話でのやり取りにまで広く応用できる、オススメの“スゴ技”。相手の笑顔や良い返事を引き出したいのなら、まずあなたが笑顔になるのです!